辨 |
ショウブ属 Acorus(菖蒲 chāngpú 屬)については、ショウブ属を見よ。 |
訓 |
『大和本草』菖蒲に、「石菖蒲、泥菖蒲ヨリ小ナリ。根ハ藥ニ用ユ、又盆ニウヘテ賞玩ス、・・・」と。 |
説 |
東アジアの亜熱帯・暖温帯に分布(日本では中部地方以西・中国では長江流域以南)。 |
誌 |
漢土では、古くから菖蒲(セキショウまたはショウブ)の根を食用・薬用にし、また辟邪の呪物として用いた。 |
春秋時代、『左伝』僖公30年(B.C.630)に、魯は周の使節を「昌歜(日本人の読みではショウサン chāngcăn、中国人の読みではショウショク chāngchù。きざんだ菖蒲の根のひたしもの・浅漬け)・白黑(白い煎り米と黒い煎りきび)・形鹽(虎の形に整えた盛り塩または焼き塩)」で供応したことが見える。 |
戦国時代、『楚辞』に見える蓀(ソン,sūn)や荃(セン,quán)は、菖蒲であるという。蓀は、重要な香草であり、また君王の尊称として用いられ、引いては二人称の尊称でもあった。 |
漢代ころからは薬用に供せられてきた。
加えて、その芳香と薬能から、また剣に似た葉の形から、菖蒲は辟邪の力を持つと考えられ、端午の節(旧暦5月5日)に邪鬼を払う呪物として用いられた。つまり、菖蒲の葉を剣に見立て、ヨモギを鞭に見立てて、蒲剣蓬鞭と称して門に飾り、その花を延年益寿の薬とした。
また後には、その根を刻んで酒に浸し 菖蒲酒と称して飲むなどした。このようなことから、端午節を蒲節とも呼ぶ。 |
宋代以来、「葉に剣脊あり、痩根は密節」のさまを愛で、庭園にまた盆景に植えて、その葉を観賞する。 |
今日の中国では、次のものの根茎を菖蒲(ショウホ,chāngpú)と呼び、薬用にする。
『中薬志Ⅰ』pp.439-444 『全國中草藥匯編 上』pp.190-191,250-251
セキショウ A.gramineus(石菖蒲) 最も広く用いる
ショウブ A.calamus(水菖蒲・臭蒲・白菖蒲・建菖蒲) 上記に次いで多く用いる |
日本では、菖蒲を辟邪の呪物とする習慣を漢土から受け継いだ。ただし、菖蒲(ショウホ,chāngpú)をショウブと理解したことから、セキショウではなくショウブを用いて今日に至る。 |